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特許の英訳を出願前に確かめる5つの項目

外国に出す前の特許の英訳で、用語・数値・参照符号・請求項の従属・訳抜けをどう確かめるか。

1出願前の英訳で起きやすい誤りの種類

日本語で書いた明細書を英訳して外国に出すとき、訳文の誤りは出願後に直しにくい性質があります。米国では、英語以外の言語で出した非仮出願に対して、英語の翻訳文と「翻訳が正確である」旨の陳述が求められ、MPEPは翻訳が逐語訳(literal translation)であることを前提にしています(37 CFR 1.52(d)、MPEP 608.01)。つまり、訳文はそのまま審査の対象になり、公開される文書も翻訳文です。

日本に外国語で出願する場合も同じ構造です。外国語書面出願(特許法第36条の2)では、外国語書面の翻訳文が願書に添付した明細書・特許請求の範囲・図面とみなされ(同条第8項)、誤訳を直す補正には理由を記した誤訳訂正書が要ります(第17条の2第2項)。誤訳訂正書によらない補正は翻訳文に記載した事項の範囲内に限られます(同条第3項)。

出願前の照合で見つかる誤りは、おおむね次の5種類に分かれます。以下の節で、ひとつずつ確かめ方を書きます。

  • 同じ日本語の語が、訳文の中で別の英語に揺れている(用語の揺れ)
  • 数値・単位・参照符号が原文と違う(桁、単位の取り違え、符号の付け違い)
  • 請求項の番号と従属先が原文と対応していない
  • 原文の文や段落が訳文に無い(訳抜け)、または原文に無い文がある
  • 機械翻訳の評価点が高いのに、意味が反対になっている文がある

2用語の揺れを全件で拾う

用語の揺れは、読んで気づくより、数えて見つけるほうが確実です。原文に出る名詞(部材名・工程名・パラメータ名)を全件抜き出し、それぞれに訳文のどの語が当たっているかを表にします。1つの原語に2つ以上の訳語が当たっていれば、それが揺れの候補です。

揺れには、直すべきものと、直してはいけないものがあります。原文が意図して使い分けている語(例えば「固定」と「固着」)を訳文で1語にまとめると、原文より狭い、または広い記載になります。逆に、原文が1語なのに訳文で2語に分かれていれば、訳文の請求項と明細書の対応が崩れます。表にするのは、どちらに当たるかを貴所が判断するためです。

図面の中の文字も同じ表に入れます。PCTの規則49.5は、翻訳文に含める要素として明細書・請求の範囲・図面の文字部分・要約を挙げています。図面の文字は訳し漏れやすく、明細書と違う訳語になりやすい場所です。

3数値・単位・参照符号を原文と突き合わせる

数値・単位・参照符号は、原文と訳文を機械的に突き合わせられる項目です。原文からすべての数字(範囲の上限・下限、温度、圧力、比率、時間)と単位を抜き出し、訳文の同じ位置に同じ値があるかを1件ずつ確かめます。全角と半角、小数点とカンマ、「〜」と「to」の範囲表現は、桁の取り違えが起きやすい箇所です。

参照符号(10、12a、100など)は、図面・明細書・請求項の三者で同じ部材に同じ符号が付いているかを見ます。訳文で符号が抜けた箇所、符号は同じなのに部材名の訳語が違う箇所は、用語表と合わせて拾えます。

化学式・配列・式番号は、文字の形が崩れていないか(上付き・下付き・ギリシャ文字)まで見ます。ここは訳の良し悪しではなく、転記の誤りが出る場所です。

4請求項の番号と従属先を確かめる

請求項は、番号・従属先・カテゴリ(物か方法か)の3点を、原文と訳文で表にして突き合わせます。「請求項1に記載の」が「claim 2」になっていないか、多項従属の範囲(「請求項1から3のいずれか」)が訳文で狭まったり広がったりしていないかを見ます。

従属先の誤りは、出願後に補正で直すとしても、補正の範囲や時期に制限がかかる場合があります(日本では特許法第17条の2)。出願前に直すのが、いちばん費用がかからない時点です。

請求項の訳文は、明細書の訳語と一致しているかも確かめます。明細書で「fastening member」と訳した部材が、請求項で「fixing member」になっていれば、前の節の用語表で拾えるはずです。

5訳抜けの候補を文の対応で探す

訳抜けは、原文と訳文を文単位で対応させると見つかります。原文の段落ごとに文の数を数え、訳文の対応する段落の文の数と比べます。数が合わない段落を、文ごとに読み合わせます。英訳では2文を1文にまとめることがあるので、数の違いがすべて訳抜けではありませんが、候補を絞るには十分です。

逆に、訳文にだけある文(訳者の補足、機械翻訳が生成した文)も、この対応表で浮かびます。原文に無い記載は、翻訳文の範囲を超える記載として扱われる恐れがあるので、残すかどうかを貴所が判断する材料になります。

段落番号【0001】の並びが訳文で飛んでいないか、見出し(技術分野・背景技術・発明の概要など)が揃っているかは、文の対応の前に見ておくと速く済みます。

6機械の評価の点数をあてにしない理由

機械翻訳の品質を点数で出す仕組み(BLEUなど)は、参照訳との字面の近さを測るものです。否定語の脱落、主語の入れ替わり、数値の桁違いは、字面の差が小さいので点数に表れにくい性質があります。点数が高い文ほど読み流しやすく、意味の反転が残りやすいとも言えます。

出願前の照合では、点数ではなく、前の節までの突き合わせ(用語表・数値表・請求項表・文の対応表)を全件で作ることを勧めます。表は、誤りを見つけるためだけでなく、貴所が「確かめた」と記録に残すためのものでもあります。

機械翻訳そのものを使わない、という話ではありません。下訳に使い、人が全件を突き合わせる、という分担にすると、点数に頼らずに済みます。

7所内で確かめるか、外に出すか

上の5つの項目は、所内でもできます。必要なのは、原文と訳文を文単位で並べる手間と、用語・数値・請求項・文の対応の4つの表を作る時間です。件数が少なく、担当者が原文の技術分野に明るい場合は、所内で済ませるのが早いでしょう。

外に出す場合は、「訳し直し」ではなく「照合と記録」を頼むのか、「全文の手直し」まで頼むのかを先に決めます。照合だけなら、納品物は表と指摘の一覧で、直すかどうかは貴所が決めます。どちらの場合も、依頼先が機械翻訳や文章生成のサービスに原稿を送るかどうか、送るなら学習に使われない条件か、を書面で確かめておきます。

出願前の英訳の照合を当社に出す場合の料金と納期は、この記事の末尾の案内のとおりです。

8参照

この記事で確かめた一次情報です(法令は e-Gov 法令検索の現行版)。

この作業を外に出す場合 出願前の照合は1件 27,500円(税込)(予定)・3営業日です。まず公開番号1つの無料の照合から、届くものを確かめてください。

まず、公開番号を1つ送ってください。

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