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米国の拒絶理由(Office Action)を和訳するときの読み方
米国の拒絶理由の構成、引用文献の指摘段落の拾い方、依頼人への報告に使う対比表の作り方。
1米国の拒絶理由の構成(102条・103条・112条)
米国の拒絶理由通知(Office Action)には、表紙の Office Action Summary(様式 PTOL-326。MPEP 706.07 は最終拒絶までの通知でこの様式を使うことを定めています)のほか、各請求項の処分、拒絶の理由ごとの本文、引用文献の指定、審査官の連絡先が含まれます。
拒絶の根拠となる条文は、おおむね次の3つに分かれます。MPEP 706.02 によれば、先行技術に基づく拒絶がもっとも多く、新規性(35 U.S.C. 102)か自明性(35 U.S.C. 103)のいずれかです。先行技術によらない拒絶として、記載要件・実施可能要件・明確性などの 35 U.S.C. 112 があり、特許適格性の 35 U.S.C. 101 が加わることがあります。
通知が「非最終(non-final)」か「最終(final)」かも、表紙で区別されます。最終拒絶(37 CFR 1.113)では、応答の種類が審判・継続審査の請求・限られた補正に絞られます。和訳では、この区別をそのまま訳し、どちらに当たるかを本文の冒頭に明記します。
応答の期間も表紙に書かれています。本案に関する通知の応答期間は通常3か月の短縮法定期間で、延長を含めても通知の日から6か月を超えられません(35 U.S.C. 133、37 CFR 1.136(a)、MPEP 710.02(b))。制限要求(restriction)だけの通知は2か月です。和訳では、通知の日付と期間の起算を、原文どおりに書き写します。
2審査官が指した段落を拾う
37 CFR 1.104(c)(2) は、審査官に、手元の最良の引用文献を挙げ、関連する箇所を指定し、どの請求項に当てるかを特定するよう求めています。したがって拒絶理由の本文には、引用文献の段落番号・欄と行・図番号が書かれているのが普通です。和訳の作業は、この指定箇所を引用文献の原文から1件ずつ拾うことから始まります。
拾うときは、通知に書かれた範囲をそのまま取ります。指定が「col. 3, lines 10-25」なら、その欄と行だけを訳し、前後を足しません。指定が段落番号([0031])なら、その段落の全文を訳します。審査官が引いていない箇所を訳し足すと、通知の和訳ではなく、和訳者の解釈が混ざったものになります。
引用文献が日本語の公報(または日本語の対応公報がある外国公報)の場合は、訳さずに日本語原文の該当箇所をそのまま引きます。対応公報の段落と米国公報の段落の番号がずれることがあるので、ずれは注記します。
引用文献が複数ある 103 条の拒絶では、主引例と副引例のそれぞれについて、審査官が「どの構成をどの文献のどこに見た」かを、文献ごとに分けて拾います。
3請求項の構成ごとに対比表へ並べる
拾った段落は、請求項の構成ごとに並べると読みやすくなります。対比表の左の列に請求項の構成要素(原文と和訳)、右の列に審査官が当てた引用箇所(原文と和訳)、その右に通知の文中で審査官が書いた理由の訳、という3列が基本です。
表にすると、審査官が通知の中で触れていない構成要素が、空欄として見えます。空欄は「審査官が見落とした」とも「自明だと考えた」とも読めますが、どちらかを表に書くのは和訳の範囲を超えます。空欄は空欄のまま残し、判断は貴所と依頼人に委ねます。
112 条の拒絶は、引用文献を伴わないので、表の右の列には通知の本文(どの語・どの記載が不明確か、どの記載が明細書に裏づけられていないか)の訳を置きます。
最終拒絶の場合は、前回の通知と今回の通知で、同じ構成要素に当てられた引用箇所が変わっていないかを並べておくと、貴所が応答の方針を考える材料になります。これも、並べるところまでが和訳の仕事です。
4和訳で書いてよいこと・書かないこと(弁理士法75条)
弁理士法第75条は、弁理士でない者が、報酬を得て、特許庁における手続の代理、これらの手続に係る事項の鑑定、政令で定める書類の作成を業とすることを禁じています。政令(弁理士法施行令第8条)が定める書類には、願書・明細書・特許請求の範囲・意見書・審判の請求書・答弁書・手続補正書などが含まれます。
この条文に照らすと、通知の和訳と対比表の作成が扱うのは「通知に書かれた事実の訳」までです。和訳に含めてよいのは、通知本文の全訳、引用文献の指定箇所の訳、請求項の構成と引用箇所の対応表、通知の日付・期限・様式番号の書き写しです。
和訳に含めないのは、拒絶の当否についての意見、引用文献との相違点の指摘、補正案、応答の方針、審査官への反論の文案です。これらは鑑定や意見書の作成に当たりうるので、弁理士である貴所が行います。
訳語に迷った箇所(例えば「configured to」の訳し分け)は、訳文の中で決めるのではなく、候補を併記して注記にします。訳語の選択がそのまま請求項の解釈に触れることがあるためです。
5依頼人への報告に使うときの注意
和訳と対比表を依頼人への報告にそのまま使う場合は、通知の日付と応答期限を報告の冒頭に置き、期限の起算(通知の発送日)を原文の表記のまま残します。期限は依頼人がいちばん先に知りたい情報で、和訳の数字の転記ミスが最も費用のかかる誤りになります。
対比表は、依頼人が原文を読めない場合の補助として使えますが、表に「審査官の指摘は妥当か」の欄を足すのは貴所の仕事です。和訳の納品物には、その欄を空けておくか、含めないかを事前に決めておくと、報告の作り直しが減ります。
通知の中の審査官の連絡先(氏名・所属・連絡の方法)は、通知の一部として訳しますが、依頼人向けの報告に載せるかどうかは貴所の運用に従います。
米国の拒絶理由の和訳と対比表を外に出す場合の料金と納期は、この記事の末尾の案内のとおりです。
6参照
この記事で確かめた一次情報です(法令は e-Gov 法令検索の現行版)。
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