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米国出願の多項従属クレーム(マルチクレーム): 認められる形・認められない形・手数料

米国出願の請求項で多項従属(マルチクレーム)が認められる形(択一的な引用)と認められない4つの形、使ったときの手数料の数え方、日本語の原文から英訳するときに起きやすいずれと確かめる手順。

1日本と米国で違う「多項従属」の扱い

「請求項3又は4に記載の装置であって…」のように、先に書いた2つ以上の請求項を引用する請求項を、多項従属請求項(米国では multiple dependent claim。所内では「マルチクレーム」と呼ぶことが多い形)といいます。日本では、特許法第36条第6項第4号を受けた特許法施行規則第24条の3が請求項の書き方を定めていて、他の二以上の請求項を択一的に引用する請求項は認められます。認められないのは、択一的に二以上を引用する請求項が、さらに択一的に二以上を引用する請求項を引用する形です(同条第5号)。

米国では、35 U.S.C. 112(e) と 37 CFR 1.75(c) が多項従属請求項の形を定めています。日本と同じく「択一的に引用すること」と「他の多項従属請求項の基礎にしないこと」が条件ですが、米国にはこれに加えて、多項従属請求項を含む出願に別の手数料がかかり、手数料のための請求項の数え方も変わる、という違いがあります。

日本語の原文では問題なく通る請求項の形が、そのまま英訳すると米国では形式の不備(objection)になったり、見込みより手数料が増えたりするのは、この違いが原因です。この記事では、一次情報(35 U.S.C.・37 CFR・MPEP)に書かれている範囲で、認められる形・認められない形・手数料の数え方を整理します。

2米国で認められる形: 先に書いた請求項を択一的に引用する

35 U.S.C. 112(e) は、多項従属請求項の条件を3つ定めています。先に書いた2つ以上の請求項を「択一的にのみ」引用すること、引用した請求項の内容をさらに特定する事項を加えること、他の多項従属請求項の基礎にならないこと、です。多項従属請求項は、引用した各請求項の構成要件のすべてを、それぞれの請求項との関係で別々に取り込んだものとして扱われます(複数の単項従属請求項をまとめて書いたものと同じ扱い)。

MPEP 608.01(n) は、認められる書き方の例を挙げています。

  • A gadget according to claims 3 or 4, further comprising ---
  • A gadget as in any one of the preceding claims, in which ---
  • A gadget as in any one of claims 1, 2, and 3, in which ---
  • A gadget as in one of claims 4-7, in which ---
  • A gadget as in any of claims 1-3 or 7-9, in which ---

「claims 1, 2, and 3」のように and でつないでいても、前に any one of が付いていれば択一的な引用として認められます。逆に、範囲で書いた「claims 1-3」は、any of などの語が無いと次の節の「認められない形」に入ります。語の有無で判定が分かれるので、英訳では引用句を1つずつ見る必要があります。

3米国で認められない4つの形

MPEP 608.01(n) は、認められない書き方を4つに分けています。

  • 択一的でない引用: 「according to claim 3 and 4」「according to claims 1-3」「as in claims 1 or 2 and 7 or 8」「as in the preceding claims」「as in claims 1, 2, 3, 4 and/or 5」「as in claims 1-3 or 7-9」
  • 先に書いた請求項を引用していない: 「as in any of the following claims」や、請求項5が請求項6又は8を引用する形
  • 別の特徴に向けた2組の請求項を引用する: 「as in claim 1 or 4 made by the process of claims 5, 6, 7, or 8」
  • 他の多項従属請求項を引用する: 請求項5が多項従属請求項であるときに、請求項8を「as in claim 5 or claim 7」と書く形(直接の引用も間接の引用も不可)

形式が不適切な多項従属請求項は、37 CFR 1.75(c) に基づく objection の対象になります。MPEP の定型文(¶ 7.45)では、その請求項は実体的な審査をされない(not further treated on the merits)とされています。拒絶(rejection)ではなく形式の指摘ですが、応答と補正の手間が1往復分かかります。

日本の施行規則第24条の3第5号が禁じているのは、上の4つ目(多項従属請求項を引用する多項従属請求項)だけです。1つ目から3つ目は、日本語の原文では問題にならないことがあり、英訳の段階で初めて不備になります。

4多項従属を使うと手数料がどう増えるか(37 CFR 1.75(c)・1.16)

37 CFR 1.75(c) は、手数料を数えるときの規則を定めています。多項従属請求項は、直接引用している請求項の数だけの請求項として数えます。さらに、多項従属請求項を引用する請求項も、その多項従属請求項が直接引用している請求項の数だけ数えます。

例えば、請求項5が「claims 1, 2, 3, or 4」を引用していれば、請求項5は4つの請求項として数えます。請求項6が請求項5だけを引用していれば、請求項6も4つとして数えます。原文の請求項が20本でも、この数え方では20本を超えることがあります。

関係する手数料は、37 CFR 1.16 に3つあります(2026年11月1日時点の eCFR の額。大規模事業体/小規模事業体/マイクロ事業体の順)。

  • 独立請求項が3つを超えるとき、超えた1項ごとに 600/240/120ドル(1.16(h))
  • 請求項の総数が20を超えるとき、超えた1項ごとに 200/80/40ドル(1.16(i))。多項従属請求項は上の数え方で数えます
  • 多項従属請求項を含む(又は含むように補正した)出願に、出願1件あたり 925/370/185ドル(1.16(j))

多項従属請求項を1つ使うだけで出願1件あたりの手数料(1.16(j))がかかり、請求項の数え方で20本を超えれば超過分の手数料も加わります。額は改定されるので、見積のときは eCFR の現行版で確かめます。

5日本語の原文から英訳するときに起きやすいずれ

日本語の請求項は、「請求項1から3のいずれか一項に記載の」のように、択一的であることを「いずれか一項」で示します。英訳で「according to claims 1 to 3」「according to claims 1-3」と訳すと、any one of に当たる語が落ち、米国では択一的でない引用と判定されます。原文の「いずれか」が英訳のどの語に対応しているかを、引用句ごとに見ます。

「請求項1又は2に記載の装置と、請求項3に記載の方法」のように、別の特徴に向けた請求項を1つの請求項で引用する形は、日本語では書けても、米国では3つ目の「認められない形」に当たります。

多項従属請求項を引用する多項従属請求項は、日本の現行の施行規則でも認められないので、原文の段階で無いことが多いものです。ただし、翻訳の過程で引用先が「請求項4又は5」から「請求項4から6のいずれか」のように原文とずれると、英訳側で新たに生じることがあります。引用先の番号が原文と英訳で一致しているかを、全請求項で突き合わせます。

なお、米国の出願で請求項をどの形にするか(多項従属を単項従属に書き直すか、手数料を払って残すか)は、個別の案件の判断であり、米国の代理人と弁理士である貴所が決めることです。この記事は、形式の規則と手数料の数え方の説明にとどめます。

6英訳の請求項で確かめる手順(所内でできること)

出願前の英訳で、請求項の従属について確かめる項目は4つです。

  • 各従属請求項の引用先の番号が、原文と英訳で一致しているか
  • 2つ以上を引用する請求項の引用句に、or/any one of/any of/either … or/one of のいずれかがあるか(and だけ・範囲だけ・and/or は不可)
  • 2つ以上を引用する請求項が、別の多項従属請求項を引用していないか(間接の引用も含む)
  • 1つの請求項が、別の特徴に向けた2組の請求項を引用していないか

あわせて、37 CFR 1.75(c) の数え方で請求項の総数を出し、独立請求項の数と合わせて手数料の見込みを書き出しておくと、依頼人への見積のずれが減ります。

請求項の番号と従属先の突き合わせの手順は、別の記事「特許の英訳を出願前に確かめる5つの項目」の4節にも書きました。

7所内で確かめるか、外に出すか

上の4項目は、請求項が20本前後なら、所内で確かめられます。請求項が多い出願や、同じ月に米国出願が重なるときは、原文と英訳の請求項を並べた表を作る手間が先に立ちます。

当社の出願前の照合は、貴所が用意した日本語の原文と英訳を全件機械で照合し、請求項の番号と従属先の対応を含む検査記録を付けます。直すかどうかは貴所が決めます。まず公開番号1つの無料の照合で、届くものを確かめてください。料金と納期は、この記事の末尾の案内のとおりです。

8参照

この記事で確かめた一次情報です(法令は e-Gov 法令検索の現行版)。

この作業を外に出す場合 出願前の照合は1件 27,500円(税込)(予定)・3営業日です。まず公開番号1つの無料の照合から、届くものを確かめてください。

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